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社員の定着に悩む企業が増加。オンボーディングに注目が集まる
- HRオンボーディングベンチャー人事ウェルカムキットスタートアップ


はじめまして!株式会社Noftyです。私たちは、会社へ新しくジョインするメンバーが入社初日から気持ちよく働くための、ウェルカムキット・サービスをご提供しています。
メンバーの迎え入れは、会社の組織づくりにおいて大切です。近年、会社と社員の関係性が変わりつつある中、新しいメンバーにどのようにチームに馴染んでもらい、良い組織づくりをしていけばいいのか、連載で論考集をお送りします。
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「採用したばかりの人が、すぐに辞めてしまった」
「何人採用しても、社員が増えない。同じ人数が辞めている」
企業の人事担当者や管理職の皆さんからこのような悩みを耳にするようになりました。コストも労力もかけて採用した社員が数ヶ月で辞めてしまうことが続けば、採用担当者も現場も疲弊し、組織が傷んでいきます。
人材の採用や定着に悩む企業が増える中、「オンボーディング」という取り組みに注目が集まっています。英語では「船や飛行機に乗る」という意味を持つオンボーディングは、社員が社内で人間関係を築いて活躍できるようになるためのプロセスをいいます。まだ日本では認知度が低いものの、その必要性が高まっているのです。
今、なぜこの取り組みに注目が集まっているのでしょうか。まずはその背景となる日本の採用市場から見ていきたいと思います。
社員採用が楽になる時代は、もう二度と来ない

近年、多くの企業が人材採用に力を入れています。採用専門のサイトを用意したり、カジュアル面談を積極的にしたり、採用広告を打ったりする施策は、もはや珍しいものではなくなりました。
各企業がこれらの施策を行うのは、良い社員を採用できにくくなったからにほかなりません。なぜ採用が難しくなっているのでしょうか。
その背景には、日本の人口ピラミッドの変化があります。2022年、20代の人口は40代と比べて約30%も少ないのです(※1)。これまでと同じ採用基準で、同じ人数の若手層を採用したくても、難しいことは一目瞭然です。
また、大卒求人倍率は2015年以降、1.5倍(1人に対して1.5件の求人がある)以上となっており(※2)、新卒採用においても企業が欲しい人材を採りにくくなっていることが分かります。
そして、組織をリードする40代の即戦力を採用することも難しくなっています。2000年前後に社会人になった40代は就職氷河期世代にあたり、非正規雇用で働いてきた人も多く、組織をマネジメントできるだけの経験がある人が少ないのです。「大卒フリーター」「ニート」という言葉が生まれたのも、就職氷河期世代が社会に出た時期のことでした。
日本の人口は今も減り続けています。残念ながら社員採用が楽になる時代はもう来ないと考え、採用だけに力を入れるのではなく、入社した社員を大切にし、社員が活躍できるための施策も真剣に考えておいた方がよいでしょう。
会社と社員の関係性が変化している

次に、社員が活躍するための施策を考えるにあたり、会社と社員の関係性について紐解いていきたいと思います。今、この関係性に変化が生じているのです。
日本企業における会社と社員の関係性は、会社が社員の終身雇用を約束する代わりに、社員は会社に忠誠を誓うというものでした。第二次世界大戦後に強く根付いたこの関係性によって、社員は「自分は会社の一員である」という帰属意識が芽生え、会社の業績のために努力をしたのです。
この関係性を支えた土台には、日本人ならではの価値観もあると考えます。その起源は、江戸時代に日本に広く普及したとされる「論語」の教えにあります。世代間で愛を与えていく「仁」の考え方が、企業の倫理観に自然と影響を与えているのです。先輩が後輩を育成するのは当然であり、後輩はその恩を次の後輩を育てることで返していく。この「恩返し」が繰り返され、日本は世界でも群を抜いて100年以上続く企業が多いとされています。そして会社は社員を雇用し続けてくれるという、家族にも近い安心感がこの価値観をさらに強いものにしてきました。
ところが、バブル崩壊以降の日本は不況が続き、終身雇用制度を維持できない企業が増えました。一生安泰と言われていた大手企業も早期退職制度を発令するようになり、会社は社員にとって安心できる場ではなくなってしまったのです。会社と社員の関係性に変化が生じてきたのは、この頃からです。

会社と社員の新しい関係性を築くには、オンボーディングが必要
では今後、社員は会社に何を求め、会社は社員に何を与えれば良い関係性を築けるのでしょうか。
これからの会社と社員の関係性を考えるキーワードは「エンゲージメント」です。この言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
近年のビジネスパーソンは、会社への忠誠を誓うのではなく、会社と自分の価値観が合い、自己実現ができる場所であることを求めるようになっています。エンゲージメントとは、社員が能力を発揮して自発的に貢献しようとし、会社は社員1人ひとりが活躍できる場を提供するという対等な関係性です。
会社がエンゲージメントを高めようとすると、採用基準もおのずと変わってくるはずです。性別や年代、国籍といった属性や働き方を基準に採用するのではなく、価値観が一致していることを軸に採用することになります。
エンゲージメントによって作られた組織は、属性や働き方の面で多様性が生まれます。予測が難しいこれからの時代においては、多様な人が集まり、多様な考え方を取り入れていく組織の方が成長していくでしょう。

多様な人が集まる組織は、ビジョンやパーパスによって求心力を持たせる必要があります。「売上○円を目指す!」と目標を命じるのではなく、会社が目指す方向性や価値観をしっかり伝え、それに理解し共感する人を束ねて組織を作っていくのです。
会社からビジョンやパーパスを伝えて社員と価値観をすり合わせる施策は、社員の入社直後から実施する必要があります。これが、入社後に起きやすい早期離職を防ぎ、社員を定着させる「オンボーディング」施策の一環です。各企業はオンボーディングの目的をどのように定め、何の施策を企画・実施すればいいのか、その考え方を今後の連載でご紹介したいと思います。
リモートでどのように社員の求心力を高めるか?

コロナ禍で急速に広まったリモートワークは、組織作りを難しくしています。企業の人事や管理職にとっては、メンバーと直接顔を合わせずにどうオンボーディングをして求心力を高めればよいのか、悩ましいと思います。
リモートワーク中心の働き方における組織作りは、全世界で今まさに実験中。今後の連載では、オンボーディングを複数の要素に分け、リモートワークで行う難しさと乗り越え方を考えていきます。
ウェルカムキットとは?その効用と限界を探る

新たに入社した社員に、会社から渡す物品のセットを「ウェルカムキット」と呼びます。業務に必要な物のほかに、会社のロゴが入ったステッカーや文房具、書籍などが含まれることも多いようです。ウェルカムキットの配布は、オンボーディング施策のひとつにあたります。
皆さんの中には、学校に入学したときや、有名人のファンクラブなどに入ったときに、記念品のようなものをもらった経験がある人もいるかもしれません。これもウェルカムキットの一種です。
Noftyのサービスでもある、ウェルカムキット。欧米では広く浸透しているようですが、日本企業でも新入社員へウェルカムキットを渡す企業が少しずつ増えています。ウェルカムキットにはどのような効用があり、どのような企業が実施しているのでしょうか。そして何を用意するとよいのでしょうか。作って配れば効果が出るわけではない点も忘れないでおきたいものです。ウェルカムキットの効用と限界についても、今後、事例を交えてご紹介していきます。
次回以降の記事では、変わりつつある会社と社員との関係性を踏まえ、エンゲージメントの高め方やオンボーディングの概要、ウェルカムキットの意味合いと効果などについて、日本企業特有の文化や背景にも触れながらご紹介していきます。
社員の定着や組織作りに悩む皆さんの参考になれば幸いです。どうぞお楽しみに!
※1:総務省統計局 人口推計 2022年2月時点のデータより算出
※2:リクルートワークス研究所 第38回ワークス大卒求人倍率調査(2022年卒) より