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組織のエンゲージメント向上は、オンボーディングからはじまる

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皆さまの会社では、新入社員をどのように迎え入れていますか?

新入社員の方々は、入社直後の期間を不安なく過ごせているでしょうか。

そして、その後も活躍できているでしょうか。

社員が入社してから早期に会社になじみ、活躍できる状態にすることを「オンボーディング」といいます。日本でも近年耳にするようになったオンボーディングは、会社にも社員にも大きなメリットがある取り組みです。前回のコラムでご紹介した、エンゲージメントを高める第一歩となるものでもあります。

今回は、エンゲージメントが高い組織を作るにあたってのリーダー層の役割についてご紹介し、そのスタートであるオンボーディングの解説をします。

エンゲージメントを高めるためのリーダーの役割とは


前回のコラムでご紹介したエンゲージメントを高めるために大切な役割を果たすのは現場のリーダー層です。社員のエンゲージメントはすぐに高まるものではなく、日々の業務を通じてじわじわと形成されていきます。社員と多く関わることになる直属の上司の接し方が、エンゲージメントに影響を与えます。

ところが、リーダー自身がエンゲージメントを高めてもらう育成をされていなく、メンバーにどう接したらいいか悩む場合は多いのではないでしょうか。人事部門の皆さんもまた、現場のリーダー層へのフォローに悩んでいるかもしれません。

まずリーダー層が知っておきたいのは、ビジネスパーソンの価値観の変化です。多くのリーダー層の世代である30代後半以降と、Z世代を中心とした若手世代とでは「働くことへの向き合い方」が異なるといわれています。若手世代は、「自分が働くことで、どのように社会貢献できるか」でキャリアを選ぶ傾向にあるとされます。環境や人権といった社会問題を学生時代に学び、日本企業の働きやすさが整ってから社会人になったことも影響していると考えられます。

このような意思を持ったメンバーが活躍できるためには、リーダーの役割は従来のような「指示・管理」ではなく「支援」であるべきでしょう。メンバーの気持ちを理解し、やりたいことを実現するためのサポート役という位置付けです。

具体的な関わり方としては、

①職務への意味づけをしてあげること
②お互いを理解すること
③努力や成果を承認してあげること

がポイントです。

会社の仕事は、職務によっては顧客接点がなかったり、ルーチンワークが多かったりと、モチベーションを保つのが難しいものもあります。組織全体が見えているリーダーにこそできる役割として、メンバー1人ひとりの仕事がどのような価値があるのか、どのように社会に役立っているのかをメンバーに伝えることが挙げられます。

そして、1on1(上司と部下が1対1で行う定期的な面談)などで対話を重ねてお互いを理解し、メンバーの努力や成果を積極的に承認してあげるとよいでしょう。特にバックオフィスの職務は、意図的に大きく承認してあげることが必要ですし、表彰制度を作るのも有効です。バックオフィス部門は、予定通りの成果を出しても褒められることが少なく、ミスすれば非難されやすい性質があるからです。

ここでご紹介したリーダーの行動は、人間の特性を踏まえて人の心をつかむ考え方が土台にあります。アメリカの作家D.カーネギーは名著『人を動かす』の中で、「人を動かす三原則」として

・批判も非難もしない
・率直で、誠実な評価を与える
・強い欲求を起こさせる

という点を具体的なエピソードとともに挙げています。メンバーの心をつかむには、安心感を与え、意見を求め、本人の欲求を実現してあげることが必要なのです。エンゲージメントを高めるために求められるリーダーの行動は、指示や命令とは違い、人の心理特性に沿ったものといえるでしょう。

エンゲージメントをつくる出発点が「オンボーディング」


エンゲージメントを高める道のりの出発点が、オンボーディングです。「船や飛行機に乗っている」という意味の「on-board」がその語源です。会社を船や飛行機に例え、新たな乗組員である新入社員に、早く会社に慣れてもらうための一連のプロセスを指す言葉になりました。

オンボーディングは「順応」→「育成」→「定着」というプロセスをたどります。社員が会社の環境に「順応」し、能力を活かして成果を出せるよう「育成」を受け、やりがいを持って働くことで会社に「定着」する流れです。

会社にとってオンボーディングは先行投資になりますが、これは必要な投資だと考えます。「順応」がうまく進まないと、採用した社員の1/3が入社1年以内に辞め、「育成」がうまくいかなければ2/3が3年以内に辞めるといわれているからです。採用した社員がすぐに辞めてしまう組織は、次々に新入社員を補充し続けることになり、既存社員が新入社員を順応させ、育成する負担もいつまでもかかります。結果として組織として成長できず、エンゲージメントも高まりません。

オンボーディングの3つの観点


Noftyが考えるオンボーディングは、制度・事業・情緒の3つの観点があります。この3つはいずれも等しく重要です。

①制度のオンボーディング:社内ルールやツールなど、社内で業務を行うにあたっての諸ルールの共有。事務手続きなどの公的手続きもこの制度にあたります。

②事業のオンボーディング:自分たちが目指すゴールやプロダクトの理解など、企業が事業を行うにあたって理解すべき理念の共有。

③情緒のオンボーディング:新たなメンバーにコミュニティの構成員としてパフォーマンスしてもらうための、情緒的側面のフォロー。

制度のオンボーディングは、多くの会社で「オリエンテーション」として、入社直後に説明の場を設けます。

事業のオンボーディングは、企業理念やビジョンを人事部門がオリエンテーションで説明し、事業そのものの説明は配属先の部門で行うことが多いでしょう。

このように多くの会社で制度や事業のオンボーディングは入念に行うものの、情緒のオンボーディングはおざなりになりがちです。皆さまの会社では、3つの観点のバランスは取れているでしょうか。

情緒面もふまえたオンボーディング施策に力を入れている会社では、入社初日にウェルカム・ランチに行くなど歓迎する場を設けたり、チーム全員が自己紹介をしてお互いを知る時間を取ったりしています。例えば、オンボーディングに力を入れているメルカリでは、社員がお互いを理解するために、新入社員とメンター、そして今後関わることになるメンバーとでランチに行くことを推奨しています。新入社員が初対面の同僚へ自ら話しかけにくいので、このような場があると新入社員は不安や緊張が和らぐでしょう。

さらには、自社の価値観や社風を新入社員に理解してもらうことも情緒のオンボーディングの一環です。社風は言葉にされていないことも多いですが、仕事をする上では極めて重要です。例えば、以下の2つのうち、どちらを優先するかは会社によって異なります。

・個人で能力を発揮する or チームワークを大切にする
・意見を積極的に出す or 上司の意見に従う
・スピーディーに仕事を進める or 確実にミスなく仕事を進める

その他にも、服装や髪型はどのくらい自由か、社員交流イベントへは積極的に参加するのか、有給休暇は取りやすい雰囲気なのか、といったことも意外と大切です。こういった社風は同じチームの先輩から日々の会話を通して伝え、理解してもらうとよいでしょう。

情緒のオンボーディングは、目に見えないものなので忘れられがちですが、新入社員が安心して働き、成果を出すために欠かせない取り組みです。

ベテラン社員が多い会社は注意!オンボーディングの心構え


オンボーディングの取り組みは、どの会社でも同じように成果が出るものではありません。人材流動性が低い(退職率が低く、社歴の長い社員が多い)会社では、オンボーディングで注意したい点があります。

日本の大企業の多くは、人材流動性が低い会社です。気心が知れた同僚と「あうんの呼吸」で仕事をしており、仕事の進め方を細かく言葉にしなくてもスムーズに物事が進む、暗黙知が多い特徴がありです。同じようなキャリアを歩んでいるので物事の考え方も似ていますし、そのため異質な意見を受け入れるのが苦手な側面もあります。そして、社員の多くはこれらの特徴に無自覚でもあります。

こういった会社ほど、自社の価値観や社風をきちんと言葉にして新入社員に伝え、理解してもらう取り組みを強く意識して行うことをおすすめします。人材流動性が低い会社における情緒のオンボーディングの方法としては、新入社員から質問を受けたり、対話したりしながら社風について理解してもらうのも方法のひとつだと考えます。ベテラン社員ほど、自社の仕事の進め方や考え方を「当たり前」と思い込んでしまって説明を省きがちだからです。


次回以降のコラムでは、オンボーディングは会社と社員にどのようなメリットがあるのか、そして具体的なオンボーディング施策の考え方についても紹介していきます。採用した社員の定着に悩む皆さまにとって、オンボーディングが解決の糸口になるかもしれません。