new_value

Blog

リモートでもオンボーディングはできる? 新しい働き方におけるオンボーディングのポイント

    HRオンボーディングベンチャー人事ウェルカムキットスタートアップ
のってぃ

前回のコラムでは、オンボーディングの実践ポイントについて、Noftyが考えるオンボーディングの3つの観点(制度・事業・情緒)を交えてご紹介しました。

オンボーディング施策の例には、「ランチに行く」など出社を前提としたものもある一方、多くの会社で導入が進んでいるリモートワークでオンボーディングを実施するには、どうような点に気をつければいいのでしょうか。

柔軟な働き方は社会的にも求められており、リモートワークの導入は今後も進むと思われます。今回は、リモートワークでのオンボーディングについて考えていきます。

先輩社員の大半は、リモートでオンボーディングされていない


リモートワークは約3割の会社で導入されており、珍しい働き方ではなくなりました(※1)。これらの会社の多くは、新型コロナウイルス感染症への対策としてリモートワークを始めた場合が多く、導入から数年しか経っていません(※2)。

オンボーディングの観点で捉えると、新入社員のメンターとなる先輩社員の多くはリモートワークがなかった環境でオンボーディングされており、リモートでのオンボーディングは未経験です。採用や新入社員受け入れをする人事部門のメンバーも、おそらく同様でしょう。

そのため、受け入れ側の社員が不慣れであることから、リモートワークを導入している会社でも入社から一定期間は出社を義務付け、対面でオンボーディングを進める場合もあります。しかしながら、新型コロナウイルスのような感染症がまた流行するかもしれませんし、採用難の時代においては、柔軟な働き方を取り入れることで優秀な社員に定着してもらいたいと考える会社もあるでしょう。

リモートワークという働き方が定着した会社では、完全にリモートワークで働く社員を採用することも考えられます。人材派遣業などを手がける株式会社キャスターでは、社員は完全リモートワークで働いており、宮崎県に本社がありながら、日本全国・海外に住む正社員もいます。

時代の流れをふまえても、今後リモートワークはなくなることはないでしょう。そう考えると、リモートでのオンボーディングの仕方を考えておく必要があるのではないでしょうか。

会社として働き方の方針を決めよう


会社がリモートワークを導入したので、リモートでのオンボーディングをどうやるか考えなければ……といきなり施策を考える前に、決めておきたいことがあります。それは、自社の「働き方の方針」です。

今、リモートワークを導入している会社の中には、新型コロナウイルス感染症の対策としてリモートワークを取り入れた会社も少なくありません。

初めての緊急事態宣言から数年が経ちましたが、「会議があるときは、とりあえず出社しようか」などとリモートワークと出社をなんとなく併用している会社もあるのではないのでしょうか。自社の働き方の方針が曖昧であれば、これからどのような組織をつくりたいのか、社員にどのような働き方をしてほしいのかの指針を決めることが先決です。オンボーディング施策も、これらの指針によって内容が変わってくるからです。

たとえば、キャスター社のようにいずれ完全リモートワークを目指し、日本全国や海外からも優秀な社員を採用していきたいと考えるなら、オンボーディング施策も100%リモートで行い、効果を出すことを目指すでしょう。

もしくは、出社とリモートワークを併用するなら、どのような日は出社するのかの指針を決めた上で、その指針に応じたオンボーディング施策を考えることになります。

オンボーディングをリモートでどうやるべきか、と一足飛びに施策を考える前に、組織づくりや働き方の指針から見直してみることをおすすめします。

「事業」と「情緒」のオンボーディングはしっかり準備を


では、リモートでオンボーディングを行う際の注意点について、Noftyが考えるオンボーディングの3つの観点(制度・事業・情緒)に沿って考えていきます。

「制度」のオンボーディングは、仕組みで解決

社内規定や業務ツールなど諸ルールの説明や、事務手続きといった制度のオンボーディングは、以下のようなオンラインツールを活用することで滞りなく進められると思います。

・顔合わせ、説明:オンライン会議ツール(Zoomなど)
・契約:電子契約ツール(クラウドサインなど)
・日程調整、細かい連絡:チャットツール(Slackなど)、スケジューラー(Googleカレンダーなど)
・ファイル共有:クラウドストレージ(Googleドライブ、Boxなど)
・ルールやタスクの共有:社内イントラサイト、もしくはワークフロー管理ツール(Notionなど)

オンラインツールを準備するバックオフィス部門は一時的に負荷がかかりますが、これらのツールは普段の業務でも使うことになるので、オンボーディング施策で使っておくと、新入社員に慣れてもらえる効果もあります。

「事業」のオンボーディングでは、情報の在りかをしっかり伝える

全社の理念や戦略、部門目標、プロダクトなどの概要を理解してもらう事業のオンボーディングでは、情報の在りかを新入社員に具体的に伝えることがポイントです。

新入社員がリモートで働く際の大きなストレスは、「どこに情報があるか」「誰に聞けばいいのか」が分からないことではないでしょうか。出社していれば近くの席にいる先輩にサッと聞けますが、リモートでわざわざチャットで聞くのも気が引けてしまいます。リモートワーク経験者への調査でも、リモートで働くデメリットを「社内での気軽な相談・報告が困難」と答えた人が最多でした(※1)。

リモートで事業のオンボーディングをする際は、業務に関する情報がどこにあるのか、誰が知っているのかを具体的に伝えることが大切です。クラウドストレージを使って情報管理しているなら、フォルダ構成まで説明するレベルを想定しておくくらいでいいと思います。

そして、分からないことがあれば、先輩社員の誰に、いつ、どのように聞いていいのかもチーム内で合意を取った上で新入社員に伝えてあげましょう。

新入社員がスムーズに仕事をしやすくするために、取り除けるストレスはオンボーディングを通して解消してあげてください。

「情緒」のオンボーディングは、一番の難点


制度・事業・情緒の3つのオンボーディングのうち、リモートで行うのが最も難しいのが情緒のオンボーディングだと考えます。

会社の風土や価値観を理解してもらい、メンバーとの信頼関係を築くことには、社員の立ち居振る舞いや服装、あるいは会社のインテリアといった言葉以外の「非言語コミュニケーション」も大きく影響するからです。

リモートワークで情緒のオンボーディングを効果的に行うには、削がれてしまう非言語コミュニケーションをできるだけ言語で補うという解決策が考えられます。たとえば

・会社の価値観や、目指したい風土を明文化する
・メンバーの自己紹介を資料にしておく
・普段のコミュニケーションで、業務内容のやり取りだけでなく「ありがとう」「ここが良かったよ」など、感情も言葉にして伝え合う

といったことを地道に続けることで、新入社員が組織に対して安心感を抱き、周囲のメンバーへ信頼を寄せてくれるようになっていくでしょう。

コミュニケーションのあり方は、会社が決める


ここまで見てきたように、リモートワークでのオンボーディングには特有の難しさがあります。これらの難点を乗り越えやすくするために、新入社員が何でも質問や相談をしていい相手となるメンター役の先輩社員を1人決めておくことをおすすめします。

そして、リモートでのオンボーディングを成功する大きな要素のひとつが、コミュニケーションの在り方です。これは現場任せにせず、全社で方針を設計すべきだと考えます。日々のコミュニケーションが、結果的に会社の風土をつくっていくからです。

たとえば、先に紹介したキャスター社では、以下のようなコミュニケーションを促進しているそうです。一部をご紹介します。(※3)

・mtg前の10分間を雑談に使う
・help othersといってその週に頑張ってた人にありがとうの言葉を送る

コミュニケーションツールとして使っているチャットツールにも、運用の工夫がなされています。

・人事や経営上でまずいもの以外は基本オープンチャット
・雑談チャンネルを作る
・誰かが話したら気軽に反応する、スタンプを押す

チャットツールについては、導入したものの具体的な使い方を現場任せにした結果、使い方が部門によってバラバラになったり、利用そのものが浸透しなかったりする事例を耳にします。

コミュニケーションの方針が決まっていないと、新入社員にとっては1回発言しようとするだけで「今、この人に話していいのだろうか」「チャットツールのどこでどう質問すればいいのだろうか」と気をつかうことだらけになってしまい、能力を発揮する前に疲れ果ててしまいます。

リモートワークでオンボーディングを成功に導くためには、全社のコミュニケーション方針をつくることは不可欠だと考えます。


リモートワークでは、業務や社内の人間関係に慣れていない新入社員が特に困りそうな点を想像し、先回りしてオンボーディングで対策を取ることでその後の定着につながるでしょう。工夫次第で、リモートでもオンボーディングは十分に効果を発揮します。現場だけでなく、全社で方針を決めて取り組むことがポイントです。


※1 内閣府「第4回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/pdf/result4_covid.pdf

※2 総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/220527_1.pdf

※3 キャスター取締役CRO 石倉秀明氏「リモートワークでのオンボーディングノウハウ」
https://note.com/hideakiishikura/n/n00e4ab870712#yOe6y